札幌高等裁判所 昭和35年(ラ)45号 決定 1960年12月23日
抗告人 三村伸之
主文
原審判を取消す。
抗告人の名「伸之」を「信良」に変更することを許可する。
理由
本件抗告の趣旨および理由は、別紙記載のとおりである。
本件記録によれば、抗告人は、その戸籍上の名は「伸之」であるが、釧路市鳥取中学校、釧路湖陵高等学校以来現在在学中の室蘭工業大学機械工学科四学年に至るまで、「信良」という名を通称として一貫して使用してきており、その学生名簿、会計事務等においてもすべて「信良」名義で処理され、既に明春卒業後就職すべき勤務先も「信良」の名で決定していることが明らかである。してみれば、その就職も決定して漸く社会的な環境に入る以前に長年使用してきた通称である「信良」に変更しようとすることは、戸籍法第一〇七条第二項にいう正当な事由があるものというべく、名の変更を許可すべきものといわなければならないので、本件抗告は理由がある。
そこで、特別家事審判規則第一条、家事審判規則第一九条第二項に従い、原決定を取消し、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 南新一 裁判官 田中良二 裁判官 輪湖公寛)
抗告の理由
一、抗告人の名の変更許可申立事件について釧路家庭裁判所は昭和三十五年四月三十日申立却下の審判をなし同年五月十四日抗告人に通知があつた。
二、右審判の理由は、申立人の「伸之」と言う名を「信良」と変更するにつき、申立人主張の事実を以てしては正当な事由として首肯し難いとして、本件申立を却下したのは不服であるのでこの抗告に及んだ次第である。